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Channel: JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会
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「伝える」と「伝わる」のあいだにVol.23 誰かの作った奔流には、流されたくない

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不信任決議で失職した元知事が、SNSと応援者を駆使してまさかの当選を果たした選挙結果には驚きました。テレビマンたちは盛んにテレビ報道の威信の失墜とネットの危うさを嘆いていたけど、「いや…テレビは既に全く中立じゃないし、ずいぶん前から威信は失ってはいるよ」と複雑な思いで観ていました。

それはさておき、あの選挙戦略と結果はかなり恐ろしいと私は思っています。ネットだろうとテレビだろうと、誰かが操作し誘導するうろんな流れに巻き込まれたくはありませんよね。今回は、そのために気をつけたいことをつらつら書いてみます。

★どういう人がどういう表現で話してる?
まずは、権力や立ち位置の強い人、声のでっかい人、言葉や内容が強い人には気をつけたい。
これは別に「そういう人は全員アカン」ということではありません。中にはまっとうな主張をしている人だってたくさんいるからです。
例えばすごく怒ってる人やハッキリ物を言う人のことを「こわそう」と避けるのはイージーすぎる。社会や政治に対して「いい加減にしてくれ」「それはNOだ」という声は、強さがないとなかなか通じないものです。
逆に、穏やかで優しげな物言いでもっともらしく話す扇動者もいるので、「言い方」だけに惑わされないようにしたい。人柄や普段の言動、内容を冷静に吟味し、ファクトをチェックするのも大事なことです。

周囲を抑えつけ黙らせる権力、やたら煽り立てるような物言い、差別的な発言、弱者やマイノリティに優しくない発言、誰かを著しく傷つけ脅すような言葉。そういうものを発する人の言葉は簡単に飲み込まないようにしたいですね。

★カンタンに分けない、決めない
「分かってない人(騙されやすい愚かな人)」と「分かってる人(賢い人)」に分けて前者をバカにしたり、意見の違いですぐ敵味方認定したり、「アイツはああ言ってるから◯◯だ」と決めつけて切り捨てたり。そういう安易な判断はいくつもの分断を生んでしまいます。
本来ならルートは違えど目的は同じで、手を取り合える相手かもしれない。なのにでっかい溝をお互いに堀り、ののしり合って戦うなんてあまりにもったいない。

自分にも色々な事情や歴史、思考、嗜好がある。同じように相手にもあるのです。ただお互いよく知ろうとしないのでそれが見えていないだけ。見えないものはモンスターに見えがち。だから簡単に決めつけないようにしたいものです。

★分かりやすい物語に気をつける
今回の選挙ではいつの間にか「職を追われた彼が徒手空拳で頑張っている」→「実は既得権益とたった1人で戦う人」というストーリーが描かれ、「いい人なのに可哀相」と応援を始めた人たちもいたようです。昔から「判官贔屓」ということわざがあるくらいですから、悲運のヒーロー(に見える人)には肩入れしたくなるのが人情でしょう。

ひとは「真実」という言葉につい惹かれがちです。でもその「真実」は果たして「事実」なのでしょうか?誰かが作り上げた、共感しやすく分かりやすい「物語」かもしれないのです。
ECにおいても、単なる機能説明よりその商品が生まれた物語を描いた方がお客さまの心には響きます。でももしその物語が多分に盛られていたりウソがあったら…?
情に訴えかける語りかけ、驚くような秘話、飛びつきたくなるメリット…。そういうものに出会ったらまず一歩引いて、眉にツバつけるくらいがちょうどいいのです。

★「どうせバカなんだから」
企業のステートメントやメッセージを制作するコピーライターが、ことばの見つけ方や心得を分かりやすく解説した本の中にこういう一節があります。

受け手の知性をみくびる人ほどメッセージを単純化しようとします。

明るく、前向きで、シンプルな言葉。「どうせバカなんだからそうしないとわからないでしょ」というわけです。行き過ぎたわかりやすさ信仰と、紋切り型フレーズ氾濫の裏には、言葉に無自覚な人だけじゃなく、この手の輩が存在していることを忘れてはいけません。
(岡本欣也「ステートメント宣言」 宣伝会議)

これは本当に大事なことです。広告の作り手、商品やサービスの売り手は決してこの「みくびり」をしてはいけません。もちろん政治・社会に関しても同じこと。同時に私たちは何か尊大なものから「みくびられている」ことにも敏感にならなければいけないのです。

ただでさえ今は「そことそこで殴り合うことじゃないのに」「正義か悪かのケリをつけることじゃないのに」というのが多すぎます。まるで民衆同士がコロッセオの中で死闘を繰り広げているかのようです。
そんなことをしている間に民は傷ついたり命を落としたりするし、為政者はそれを見学しながら美味い酒を飲むし、本当に解決すべきものはコロッセオの外に雨ざらしで放置されるだけです。

真実はおそらく、YouTubeの中にもテレビの中にもありません。情報弱者だ強者だ、リテラシーがどうだということは、あまり関係ないような気がします。
もっと本質的で大切なもの。ゆらいではいけないもの。基本的な人権や平等。そういうものから軸足をずらさないようにしたい。どんどん荒れてゆく波の中にいる私たちは、普遍的な優しさを両手にもって世間を歩いていきたいですね。

JECCICA客員講師

コピーライター 近藤あゆみ

Lamp 代表
博報堂コピーライターから(株)ネットプライス・クリエイティブディレクターを経てフリーに。企業のMMVやネーミング、サイトディレクションなど手がける。恋愛コラムやブログも人気を博す。



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